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快適な春を迎えるための花粉症予防

快適な春を迎えるための花粉症予防

毎年多くの人が悩まされているつらい花粉症の症状。
そのメカニズムや治療法、予防の仕方について、当院耳鼻咽喉科 頭頸部外科の坂本達則教授にお話を伺いました。

 

 

なぜ花粉症になるの?
乾燥肌はリスクがいっぱい

 アレルギーのメカニズム(左上図)を簡単に説明しますと、花粉やハウスダストといったアレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」といい、このアレルゲンが体内に入ると体が異物とみなして、免疫機能でそのアレルゲンを「敵」と記憶します。そしてそのアレルゲンが再び体内に入ると、体はその敵を排除しようと、アレルギー症状を引き起こします。自分の体と違うものが入ってきたことに対する、過剰な免疫反応ですね。
 アレルギーは、このように体がアレルゲンを「敵」と認識するステップと、それに対して拒絶反応を起こすという2段階のステップで起きています。くしゃみや鼻水といった症状は、体がその敵を体内から排出しようとする働きです。
 花粉にもいろいろな種類があり、どの花粉に反応するかは人によって違いますし、複数のアレルゲンを持つ方もたくさんいます。中でも多くの方が悩まされているスギ花粉のピークは、西日本では2〜3月ですが、その他ヒノキやイネ科の植物、加えてダニやハウスダストなど複数のアレルゲンを持っていると、ほぼ1年中アレルギーに悩まされてしまうことになります。スギ花粉に反応する人は、共通する抗原構造を持つヒノキ花粉にも反応することが多く、これを共通抗原性といいます。同様に、花粉との共通抗原性を持つ食べ物に反応することもあり、特定のアレルゲンを持つ人は複数の抗原に反応しやすいといわれています。

 

 

 

自分のアレルゲンを知って
予防と対策を

 くしゃみ、鼻水、鼻づまり、これが花粉症の三大症状といわれますが、こうした症状に悩まされる時は早めに病院を受診してください。鼻水、鼻づまりなら耳鼻科を、目のかゆみなら眼科を受診されると良いでしょう。
 アレルギーになる人とならない人の違いや、アレルギー体質にならない方法についてはいろいろ言われていますが、実はほとんど分かっていません。花粉症を年齢別に見ると、10代をピークに年齢とともに緩やかに収まっていきます。幼い頃から症状がある人もいれば、大人になってから発症する人もいます。遺伝的な要素などさまざまな見解がありますが、多くはいまだ謎に包まれています。
 もしかしてこの症状はアレルギー?と思われる方は、血液検査を受けることをオススメします。何が原因で自分にアレルギー反応が起きているのか、また、変だと思っていた症状が実はアレルギーだったなど、自分のアレルゲンを知ることで、治療の方針を決めたり予防や対策をしたりすることができます。適切な対策で症状をコントロールし、つらい季節を快適に過ごしましょう。

 

花粉症と上手につきあう

一度発症すると、長く付き合っていかなければならない花粉症。
治療や予防をしっかり行い、上手に乗り切りましょう!

 

花粉症の治療法

症状を軽減する「抗ヒスタミン薬」&免疫反応を抑える「点鼻ステロイド」

 花粉症の治療には、鼻水や鼻づまりといった、表面化している症状を緩和する対症療法が広く用いられます。中でもよく使われているアレルギー性鼻炎の薬は「抗ヒスタミン薬」という種類の薬で、くしゃみや鼻水をブロックする役割を果たします。
 服用すると速やかに症状を抑えることができるので、好んで使う方も多いのですが、古い世代の抗ヒスタミン薬は鼻だけでなく脳にも効いてしまうため、眠気やふらつきなどの副作用が起きることも。現在はかなり改良されて、眠くなりにくい第2世代の抗ヒスタミン薬が登場しています。眠気以外には問題になる副作用はほとんどなく、すぐに症状を抑えたい時にはいいお薬です。
 いろいろな免疫反応を全体的に抑えるものとしては、鼻に直接噴霧する「点鼻ステロイド」を使用すると良いでしょう。抗ヒスタミン薬に比べて即効性はありませんが、時間をかけてアレルギーのメカニズムに働きかけるため、継続して使用することでアレルギー反応そのものを緩和させる効果があります。

抗ヒスタミン剤
根本的には治せないけど、
飲んだらすぐ効く優れモノ!

 

点鼻ステロイド
すぐ効かないからってやめないで!
継続して使うことで効果を発揮。

 
ひとくちコラム

「季節前投与」「免疫療法」などの治療法も

スギ花粉で症状が出ると分かっている人は、「季節前投与」もオススメです。本格的に花粉が飛散する2週間程度前から薬の使用を開始することで、飛散時の症状が軽減されることが分かっています。シーズン前から花粉情報をしっかりチェックし、ピーク時に備えましょう。また、アレルゲンを体内に取り込むことで体質を変え、アレルギー根治を目指す「免疫療法」という治療法もあります。注射で行う「皮下免疫療法」と、舌の下に薬を含む「舌下免疫療法」があり、アレルゲンを少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく治療法です。免疫療法は治療に3〜5年を要し、即効性はありませんが、体質そのものを改善する方法です。いずれの治療も専門医に相談の上、症状や状況に合わせた治療で花粉症を軽減させましょう。

 

最大の花粉症予防は
「花粉を避けること」

 アレルギーをゼロにする治療法は、今のところ残念ながらありません。アレルギーのもととなる花粉を取り入れないことが、どんな治療や薬よりも効果的な予防法です。その年の花粉飛散量や日々の天気予報といった花粉情報をしっかりチェックし、体を花粉から守りましょう!

マスクやメガネで
花粉をブロック!

花粉シーズンのお出かけはマスクをつけて。アレルギー結膜炎で目がかゆくなりやすい人は、メガネをかけたり、つばの広い帽子を被ったりすることで、目の結膜につく花粉の量が1/3に軽減されるといわれています。

ツルツル素材の服で
花粉をつけない

外出の際の衣服は、セーターやフリースなど花粉がつきやすい素材よりも、ツルツルしたジャケットなどがオススメ。帰宅したら、玄関先で衣服や髪についてしまった花粉をはらうことも忘れずに。

手洗い・うがい・鼻うがい

帰宅後はうがいや手洗いをしっかり行いましょう。目や鼻に入ってしまった花粉を洗い流すには、目の洗浄や鼻うがいも効果アリ!

加湿器も花粉対策に有効!

花粉対策には、空気清浄機のほか加湿器も効果的。のどや鼻を潤し、粘膜のバリア機能を高めることが大切です。また、乾燥していると室内に侵入した花粉が飛散しやすくなるため、加湿をして花粉を床へ落とし、掃除をこまめに行いましょう。

 

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鼻づまりは風邪や
アレルギーだけじゃない!?

しつこい鼻づまりの原因は、鼻の穴を左右に隔てる「鼻中隔」が強く曲がっている「鼻中隔弯曲症」など、鼻の中の形に問題がある場合も。鼻中隔は成長の過程で曲がってしまうことが多く、手術で治すことができるので、鼻づまりでお悩みの方は一度専門医にご相談を。

 

耳鼻咽喉科 頭頸部外科 教授
坂本 達則

1995年京都大学医学部卒業。京都大学大学院および理化学研究所発生・再生科学総合研究センターにおいて、内耳再生やドラッグデリバリーシステムの考え方を用いて聴力障害について研究。2006年から京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 頭頸部外科の助教として経鼻内視鏡手術や医学教育などに携わる。2016年大阪市の医学研究所北野病院、2019年京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 頭頸部外科講師などを経て、2020年から現職。


しろうさぎ75号より(2024年1月発行)

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