近年、大きな地震や台風、水害などの自然災害が全国各地で発生しています。
万が一の時のために、私たちはどのような防災対策をすればよいのでしょうか?
当院災害医療・危機管理センターの渡部広明センター長にお話を伺いました。
いつ自分の身に降りかかってくるか分からない自然災害。防災とは、そうした災害による被害を最小限に抑えるための活動や取り組みです。予期せぬ事態が起きても慌てずしっかり対応できるように、日頃から防災対策をしっかりしておく事が必要です。
「対策と言われても具体的に何をすればいいのか分からない」「そのうちやろうと思っている」「自分は大丈夫だろう」と思っている人も多いかもしれません。
でも、もしかしたら今この瞬間に、生活が一変するような災害が起きる可能性だってあるのです。私たち日本人は普段、当たり前に電気を使い、蛇口をひねれば水が出て、病気になれば病院へ行って医療を受けることができるという大変恵まれた生活を送っています。災害というのはこうした日常が一瞬にして崩れ去るものだと思ってください。「もし起こったら」という想像力を働かせておくことが、いざという時の対応力につながるのです。
何も備えをしていないという前提でちょっと想像してみましょう。突然、大きな地震が起きたとします。何とか無事に避難しましたが、停電や断水により電気も水道も使えなくなり、当分復旧しそうにありません。お腹がすいてきましたが食材のストックはなく、スーパーや飲食店などのお店も被災しています。基地局の機能停止により携帯も繋がらず、家族の無事も全体の被害状況も分かりません。逃げる時に足をケガしてしまいましたが、病院には自分よりも重傷の人たちが押し寄せていて、とても診てもらえそうにありません。避難所の開設も物資の供給も、いつになるか分からない状態です。極端な例えではありますが、被災すれば誰しもがこのような状況に陥る可能性があります。つまりこの状況下で『助けが来るまでの数日間を耐えしのぐためには何が必要か』を考えれば、自ずと備えておくべきものが見えてくると思います。
当院のDiMCOCは、災害を主とした緊急事態発生時の対応を目的に、2018年1月に設置されました。
災害時に速やかに病院機能を回復し、必要とされる医療を展開できる体制を構築することは「防ぎ得る災害死」を減らすことにもつながります。DiMCOC会議メンバーは病院の意志決定にかかわるスタッフで構成され、実働としては災害発生時にDMAT(災害派遣医療チーム)を災害現場へ派遣しています。今年1月1日の能登地震の際も、当院スタッフが現地に派遣されました。
※DiMCOC=Disaster Medical Crisis Operations Centerの頭文字をとったもので「ディムコック」と読みます。
災害発生時に院内の混乱を最小限とし、速やかに病院機能を回復し早期の医療提供を目指す。
災害発生に備えてBCP(業務継続計画)の整備や災害訓練実施等を行い、職員の災害対応能力向上を目指す。
DMATなどの災害派遣チームを指揮し、災害現場への派遣を支援する。
「明日災害が起きるかもしれない」と仮定して、自分や家族が被災した状況を想像しながら防災対策をはじめましょう。
電気やガス、水道などのライフラインが止まった場合に備え、飲料水や保存の効く食料、生活必需品などを備蓄しておきましょう。
最低3日分(可能なら1週間分)、家族がいれば人数分用意しましょう。
その他、育児用品や女性の生理用品、高齢者の方がいるご家庭は持病の薬やお薬手帳、介護用品など、それぞれのご家庭に必要なものを準備しましょう。
災害時は携帯やネットの回線がつながりにくくなり、家族と連絡が取れなくなることも想定されます。別々の場所にいる場合にどのように安否確認を取るか、家族で話し合っておきましょう。
伝言を録音すると、自分の電話番号を知っている家族や友人が録音された伝言を再生できます。事前に使い方を知っておくといざという時に役立つので、日頃から覚えておくと良いでしょう。
携帯電話やPHSからインターネットサービスを使用して文字情報を登録し、自分の電話番号を知っている家族などが、情報を閲覧できます。
災害時、道路の崩壊などにより自宅に戻れない場合もあります。そのような時はどこに集まるか、家族間で決めておくといいでしょう。
近年、各地で発生している「地震」と「台風・大雨」についての対策方法をご紹介します。
1994年島根医科大学医学部卒業。島根医科大学附属病院、津和野共存病院、UTMB、大阪府立泉州救命救急センター医長、りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター副所長等を経て、2016年より当院高度外傷センター、2018年より災害医療・危機管理センター(DiMCOC)・センター長(兼務)。病院長補佐。日本外科学会外科専門医指導医、日本救急医学会・救急科専門医指導医。
しろうさぎ78号より(2024年10月発行)