島根大学医学部附属病院

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幼児期の運動機能の発達

子どもの成長と向き合う中で、気にかかるものの一つが運動機能の発達。
体づくりのために必要な運動や、気を付けるべきことなどを、
リハビリテーション部で子どもたちのリハビリに関わるスタッフに聞きました。

 

 人間が生活の中で行う基本動作は、「歩く」「走る」「跳ねる」「潜る」「持つ」「支える」「投げる」「こぐ」「掴む」「引く」「立つ」「起きる」「よじ登る」など36種類あるといわれ、子どもはそのほとんどを6〜7歳ごろまでに習得します。その時期までに多様な運動をしておくことが、運動機能の発達において重要に。
 しかし、「幼児期からしっかり運動させなければ」と焦る必要はありません。6〜7歳ごろまでは特別な動きをしなくても筋力・瞬発力・体力が上がります。鬼ごっこやテレビを見て踊る、親にしがみつくなど、子どもが日常的に行う遊びの動作も体づくりの底上げになります。

 また、保育園・幼稚園では音楽に合わせて体を動かす遊びや体操など、身体活動の時間がしっかり設けられています。そこに家庭内での体を使った遊びを加えれば、一回の運動が短時間でも運動機能の発達を促進できます。脳や神経系もこの時期に大きく伸びるため、コーディネーション能力(右下表)が磨かれ、粘り強さも養われます。余裕があればダンスやリトミック(音楽教育の手法の一つ)などの習い事をプラスするのもいいでしょう。
 幼児期の発達は小学校以降の運動能力にも影響します。この時期に基本的な運動機能を伸ばすことで、つまずいても転びにくくなりますし、転んだときにさっと手をつくなどの体を守る動きもできるようになります。骨折などの大きな怪我の防止にも期待大です!

 

【後藤さん】
育児サークルや保育園などで同年代の子どもが集まると、ついつい成長具合を比べちゃいます。「みんな歩いているのにうちはまだハイハイ」「他の子はでんぐり返しできるのに、うちはできない」とか……。仕事で発達支援に携わっていますが、わが子のこととなると客観的に見れません。
 
 
【道端さん】
小学生は4月生まれの子と早生まれの2〜3月生まれの子だと、体格や発達が全然違いますよね。幼児期も同じです。
【松本さん】
幼児期に体が動く・動かないの差には、環境の影響もあります。家庭や保育園・幼稚園などで過ごす中で、体を動かす機会が多様にあると、運動遊びやお遊戯の時にパッと体が動きます。
 
 
【後藤さん】
親の“運動神経”がよくないと子どもも運動が苦手になりそうだと思っていたけど、小さいころから運動機能を高めれば大丈夫だったりしますか?
 
【道端さん】
俗に言う「“運動神経”がいい」は、脳が体に指示を出して動かす「コーディネーション能力」が高いということ。この能力は、子どもが運動する中で磨かれていきます。

コーディネーション能力とは

  • 定位…動くものと自分の位置関係を把握する
  • 反応…合図などに素早く応え、適切に対応する
  • 連結…体全体をスムーズに動かす
  • 識別…道具やおもちゃなどを上手に操作する
  • リズム…リズム感を磨き、動くタイミングをつかむ
  • バランス…体のバランスを保ち、姿勢が崩れたら正す
  • 変換…変わっていく状況に合わせて動きを変える

 

 
【松本さん】
“運動神経”は遺伝しないということが徐々に明らかになっています。
6〜7歳までにいろんな経験をしたことが、中高生になった段階での運動能力の差になってきますよ!
【道端さん】
この時期に体を動かすことが嫌になってしまわないように、強制したり、失敗したことを頭ごなしに否定したりしないようにしましょう。大人の関わり方、大切です!
 

 

おうちでオススメ!体を使った遊び

家にある身近な生活用品を使ったり、家族と体を動かしたり、ちょっとした工夫で体づくりに効果的な運動ができますよ。理学療法士のお2人にオススメの遊びを紹介してもらいました。

風船やティッシュペーパーを放り投げ、
ふわふわと落ちてくるのをキャッチ

四つん這いになった大人を、
登ったり、またいだり、
とびこえたり、くぐったり

ポールや丸めたマットなどに
逆さまにしがみつく「豚の丸焼き」ごっこ
(落ちても怪我をしないよう
下に布団などを敷きましょう)

増えているスポーツキッズのオーバーユース

10〜12歳は、神経の発達が完成に近づき、体力もついてくる「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。スポーツに力を入れることが楽しくなってくる時期ですが、近年は怪我や疲労骨折などに悩まされる子どもが増えています。長時間の練習や負荷が高いトレーニングで体を壊さないよう、保護者や指導者が気をつけてあげましょう。

 

答えてもらった理学療法士さん

理学療法士 松本 拓也
日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー。 スポーツを頑張る中高生やアスリートの支援にも従事しています。
理学療法士 道端 ゆう子
子どものリハビリテーション歴が部内最長で、病気を抱えた子どものリハビリ経験も豊富です。
作業療法士 後藤 雪絵
発達支援にも携わっています。 3歳の子の育児に奮闘中で、今回はリアルタイムで感じる子育ての不安や疑問を話してもらいました。

しろうさぎ75号より(2024年1月発行)

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