センター長 田邊 一明 教授
緊急性の高い循環器疾患に対し、最新の医療機器を用いて正確な診断と治療を迅速に提供することにより、患者の救命とスムーズな社会復帰を目指し、大学病院・特定機能病院としての役割を果たします。
循環器系疾患の中でも最も緊急性の高いのが急性冠症候群です。発症から緊急カテーテル治療までの時間が予後に大きく影響しますので、当院では24 時間体制で循環器内科専門医師が院内に常駐し、病院到着時から直ちに診療を開始いたします。カテーテル治療は5 名のインターベンション専門医・認定医が担当し、高度で安全な治療を提供いたします。心肺停止など重篤な病態の症例はハイブリッドER に搬入され、心肺蘇生および経皮的心肺補助(VA ECMO)を行ったうえでそのままハイブリッドER でカテーテル治療を行うことも可能です。緊急冠動脈バイパス術が必要になったり、胸痛の原因が大動脈解離の場合は心臓血管外科との連帯により速やかに緊急手術が施行できる体制が整っております。緊急治療後はICU で集中治療専門医と協力して加療を行い、早期から心臓リハビリテーション指導士らによる心臓リハビリテーションが開始され、心機能の回復およびスムーズな社会復帰をサポートしています。
総合ハートセンターのもう一つの大きな柱が「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」です。TAVI は生体弁を装着したカテーテルを大腿動脈などから挿入し、血管の内側から大動脈弁位に留置するため、心停止させる必要が無く、大きく開胸する必要もありません。手術侵襲が小さいため高齢で体力の落ちた方や合併疾患のため開胸手術が困難な方でも治療可能です。当院では2018 年4 月より島根県で初となる重症大動脈弁狭窄症に対するTAVI を開始し、これまで119 例に治療を行いました。適正な位置への弁留置には全例で成功し、30 日死亡率は0%、1 年以内の心臓死は1 例も無く、極めて良好な成績をあげています。
高齢化の著しい島根県においてTAVI の需要は益々高まるものと思われます。TAVI を行うための診断・治療から術後のリハビリを経て退院までには多くの部署のシームレスな連帯が必要不可欠です。大学病院ならではの高い組織力を最大限に発揮して、最先端の治療を安全に提供できるように努めてまいります。