※各部署の情報は2025年7月1日現在です。
診療科長 山本 徹 准教授
すべての消化管疾患に対する外科的手術を連携しながら行っています。
手術は低侵襲(胸腔鏡/腹腔鏡もしくはロボット)手術で行っていますが、どちらも高い技術を要求されます。
当科では、高い内視鏡外科技術を有している証明である学会認定資格を有する医師が3名在籍しており、安全かつ高度な技術を用いた治療を行っています。
“ がん ” に対する手術:
消化器外科では、食道から肛門にいたる消化管の “ がん(悪性疾患)”に対する外科治療を行っています。外科手術は、「“ がん ” を完全に取り除く」、「臓器の機能を可能な限り残す」といった、相反する2つの課題を両立させる必要があります。そうすることで、高い QOL( 生活の質 ) を維持できるように、御本人に最も良いと思われる治療法や手術法を提示いたします。手術は可能な限り負担の少ない(低侵襲)手術を行う方針ですが、状況に応じて、手術ではない治療法の提示もさせていただきます。
“ がん ” に対する化学療法:
外科的切除が適応にならない場合や、外科治療の効果を高めたい場合には、抗がん剤による化学療法が行われます。化学療法を行うことにより、手術が困難な状況でも “ がん ” を取り除くことができた患者さんも多く見られています。また、食道癌や胃癌、直腸癌では手術前に化学療法を行い、腫瘍を小さくしてから低侵襲手術を行うことも多いです。このように外科手術と化学療法は切っても切れない関係なので、消化器外科では、手術だけではなく多くの化学療法を行っています。
抗がん剤治療は日進月歩ですので、世界の流れに遅れない様に、消化器外科スタッフ一同、日々情報収集に取り組んでいます。また、化学療法では、副作用などによって「つらい」状態となってしまう場合もありますが、医師のみならず看護師さんをはじめとしたメディカルスタッフと連携し、治療が継続できるようにサポートする体制も整っています。
良性疾患に対する治療:
大学病院ですが、治療を行う病気は “ がん ” だけではありません。腸閉塞や、良性腫瘍(できもの)、鼠径ヘルニア(脱腸)、痔などの良性疾患に対する外科手術も行っています。癌治療を主戦場としている高い技術力を持った外科医が担当しますので、より安全な治療が可能となります。
炎症性腸疾患(IBD)に対する治療:
炎症性腸疾患(IBD:クローン病や潰瘍性大腸炎)は、内科的治療が主体となる病気です。しかしながら、手術を必要とする患者さんも少なくありません。当院では IBD センターを軸として、内科と外科が連携することで、それぞれの患者さんにあった最適な医療を提供いたします。また、クローン病で問題となる「痔瘻」に対する幹細胞移植なども行っている山陰唯一の病院です。
消化器悪性疾患に対する低侵襲(胸腔鏡/腹腔鏡・ロボット)手術
近年、消化器がんに対するロボット支援手術の広まりが目覚ましい状態です。
我々消化器外科では、保険適用となった 2017 年から順次導入を行い、現在は、食道、胃、結腸、直腸領域でロボット支援手術が可能となっています。ロボット手術は「da Vinci ( ダ・ヴィンチ ) Xi」という機器を用いて行っています。カメラの精度やロボット鉗子(実際に操作する手の様なもの)の精密さが非常に高いため、従来の腹腔鏡手術よりも更に精密で安全性の高い手術が可能となっています。現在、多くの患者さんに実施していますが、大変良好な成績です。一方で、胸腔鏡 / 腹腔鏡手術が優位な側面も多数あるため症例に応じて消化管グループでカンファレンスを行い術式を決定していきます。
若手外科医の育成
残念ながら、病気を “ ゼロ ” にすることはできません。そのため、今考えうる “ 最高の医療 ” を後進へ伝えていくことが、我々の責務です。特に、高い技術を要求される外科医は、経験がなければ上達できません。我々、消化器外科では、若手外科医にたくさんの経験を積んでもらうために、日々のトレーニングや術中の指導を積極的に行っています。患者さんの治療を安全かつ効果的に行いながら、若手指導も行っていけるのは、大学病院ならではの特徴と考えています。こうした取り組みを地道に行うことによって、島根県の外科治療レベルが恒常的に高まっていくと確信しています。