※各部署の情報は2025年7月1日現在です。
センター長 遠藤 昭博 准教授
緊急性の高い循環器疾患に対し、最新の医療機器を用いて正確な診断と治療を迅速に提供することにより、患者の救命とスムーズな社会復帰を目指し、大学病院・特定機能病院としての役割を果たします。
循環器系疾患の中でも最も緊急性の高いのが急性冠症候群です。発症から緊急カテーテル治療までの時間が予後に大きく影響しますので、当院では 24 時間体制で循環器内科専門医師が院内に常駐し、病院到着時から直ちに診療を開始いたします。カテーテル治療は 6 名のインターベンション専門医・認定医が担当し、高度で安全な治療を提供いたします。左主幹部病変などの心原性ショックを呈する超重症例には昨年導入されたインペラ(経皮的補助循環用ポンプカテーテル)を用いて治療を行います。心肺停止症例はハイブリッド ER に直接搬入され、心肺蘇生および経皮的心肺補助(VA ECMO)を行ったうえでそのままカテーテル治療を行うことが可能です。緊急冠動脈バイパス術が必要になったり、胸痛の原因が大動脈解離の場合は心臓血管外科との連携により速やかに緊急手術が施行できる体制が整っております。緊急治療後は ICU で集中治療専門医と協力して加療を行い、早期から心臓リハビリテーション指導士らによる心臓リハビリテーションが開始され、心機能の回復およびスムーズな社会復帰をサポートしています。
総合ハートセンターのもう一つの大きな柱が心臓弁膜症に対するカテーテルインターベンションです。当院では 2018年 4 月より重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を開始し、これまで 271 例に治療を行いました。適正な位置への弁留置には全例で成功し、30 日死亡率は 0%、1 年以内の心臓死は 1 例も無く、極めて良好な成績をあげております。更に心臓弁膜症に対するカテーテルインターベンションの第二弾として、2023 年 3 月から重症僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)を開始しました。大腿静脈から経皮的にカテーテルを挿入し、先端についたクリップで僧帽弁逆流を生じている部分を直接つまんで塞ぐことにより弁逆流を軽減します。TAVI も MitraClip も開胸や人工心肺を必要としないため術後の回復が非常に早く、経過が良ければ 1 週間で退院可能です。高齢化の著しい島根県において益々需要が高まるものと思われます。ただ、診断・治療から術後のリハビリを経て退院までには多くの部署のシームレスな連携が必要不可欠です。大学病院ならではの高い組織力を最大限に発揮して、最先端の治療を安全に提供できるように努めてまいります。