泌尿器悪性腫瘍に対する光力学的診断を始めました!

公開日 2011年10月01日

(平成23年10月:最新治療)

泌尿器科  本田 聡  井川幹夫

光力学的診断(Photodynamic diagnosis: PDD)は光感受性物質を体内に投与後、腫瘍に特異的に取り込まれた同物質に対して励起光を照射して発生する蛍光波長を検知することにより肉眼的には認識困難な腫瘍を診断する方法です。光感受性物質として用いられる5—アミノレブリン酸(5-Aminolevulinic acid: 5-ALA)は動植物の生体内に含まれるアミノ酸の一種で、赤ワイン、かいわれ大根、お茶、お酢等の食品に多く含まれています。泌尿器科領域では、PDDは膀胱上皮内癌などの平坦病変をターゲットとした新しい診断法として発展し、筋層非浸潤性膀胱癌においてはメタアナリシス解析により、診断率の向上とそれに伴う残存腫瘍の減少による非再発率の向上が明らかになっており、ヨーロッパのガイドラインで膀胱上皮内癌の診断において推奨され、わが国では高度医療(第3項先進医療)となっています。

 国内でPDDを行うことのできる施設はまだ非常に限られていますが、当院では7月より膀胱癌に対して5-ALA経口投与によるPDD併用の経尿道的膀胱腫瘍切除術を開始しており、また腎盂癌や尿管癌に対する尿管鏡検査にもPDDを用いています。安全性に問題はなく、通常の白色光では診断が不可能であった病変を蛍光励起させることによって視認、診断し、かつ確実に切除できるようになりました。今後はPDDを膀胱癌以外の泌尿器悪性腫瘍にも応用し、癌再発を減少させることで治療成績向上に寄与していきたいと考えています。 

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切除鏡と光源

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青色光により赤色に光る膀胱腫瘍   白色光で観察した膀胱腫瘍