島根大学医学部附属病院

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知っておこう、血液のがん

「血液のがん」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか?
ドラマや映画の影響から、“怖い病気”という印象を抱いている方もいるかもしれません。
では、血液のがんとは一体どのような病気なのでしょうか?
血液内科の鈴木律朗教授にお話を伺いました。

 

「血液のがん」とは

 血液のがんは、大きく分けて「白血病」「リンパ腫」「骨髄腫」の3つに分類されます。
 胃がんや肺がんなど、特定の臓器や組織に塊をつくる「固形がん」とは異なり、血液のがんは血液や骨髄、リンパ組織など、体中をめぐる血液細胞に発生するのが特徴です。その性質や形態は多岐にわたり、細かく分類するとおよそ250種類にも及びます。分類が非常に細かいことも、固形がんとの大きな違いです。
 また、血液のがんは、初期症状が分かりにくいため、早期に見つけるのが難しい場合が多いです。しかし、進行した状態(ステージ4)で見つかったとしても、手遅れとは限らず、治療によって改善が見込めるケースも少なくありません。
 かつては治療が難しい病気とされていましたが、現在では医療の進歩により、治療や長期的なコントロールが可能になっています。予後や病状が落ち着いていれば、日常生活を送りながら治療を続けられるケースもあります。むやみに恐れず、正しい知識を持ち前向きに治療に向き合うことが大切です。

血液のがんとその他のがんとの違い

 

「血液のがん」は大きく分けて3種類

<白血病> 血液をつくる細胞に異常が起こる

通常、血液は骨の中にある「骨髄」で、赤血球や白血球、血小板などがバランスよくつくられています。この仕組みに異常が起こり、正常な血液が作れなくなるのが「白血病」で、貧血や感染症、出血といった症状が現れます。急に進行する「急性白血病」と、ゆっくり進む「慢性白血病」があり、種類によって治療法も異なります。

<リンパ腫> 免疫を担うリンパ球ががん化

細菌やウイルスなどの異物を攻撃・排除してくれる免疫細胞「リンパ球」が、がん化して過剰に増える病気です。リンパ球は全身に存在するため、体のどこにでも発生する可能性があります。リンパ節の腫れのほか、発熱、体重減少、寝汗(夜間の大量の汗)などが見られることがあります。

<骨髄腫> 骨髄で抗体をつくる「形質細胞」ががん化

「形質細胞」は骨髄で抗体を作り体を守る働きをしますが、その形質細胞ががん化したのが骨髄腫です。がん化した形質細胞は骨髄の中で過剰に増え、正常な血液細胞がつくれなくなったり、骨を弱くしたりします。その結果、貧血や骨の痛み、骨折しやすくなる、感染症にかかりやすくなる、腎臓に障害が出るなどの症状があらわれます。

 

自覚症状があっても「見逃されやすい」?その理由

 血液のがんは分かりやすい自覚症状がなく、見逃されやすい病気です。例えば、だるさや微熱、寝汗などは、風邪や更年期、あるいは疲れのせいと見過ごしがちです。また、リンパ節の腫れがあっても痛みを伴わないことが多く、気づかずに放置されることもあります。特に高齢の方では、こうした体の変化が「年齢のせい」とされて見過ごされてしまうことも。
 風邪症状や体の不調が長く続く場合や、血液検査の異常を指摘されたときには、医療機関を受診されることをおすすめします。

 

早期発見のためのポイント 早期発見のためのポイント

※ここでご紹介したのは、あくまで一部の例です。該当しないからといって、血液のがんの可能性がゼロになるわけではありません。気になることがあれば医療機関にご相談ください。

 

治療法 治療法

 

“治らない”は過去の話?

血液のがんの治療法

 かつては「治りにくい病気」とされていた血液のがんですが、薬物療法の進歩や新たな治療法の登場により、症状の改善や病状の安定が、十分に期待できるようになってきました。
 なかでも注目されているのが「CAR‐T細胞療法」です。これは、患者さん自身のT細胞(免疫細胞の一種)を取り出して遺伝子改変し、がん細胞を攻撃する力を高める治療法です。わかりやすく言えば、T細胞にがんを見つけるための特別なセンサーを取り付けることで、がん細胞を特異的に認識し、攻撃できるようにする仕組みです。そして、改良された細胞を再び体内に戻し、がん細胞を直接攻撃させるのです。
 「CAR‐T細胞療法」は今後さらなる進展が期待される、先進的な治療法のひとつです。ただし、すべての患者さんに適用できるわけではなく、がんの種類や状態に応じて治療法は選ばれます。
 血液のがんの原因は、まだはっきりとはわかっていません。遺伝子の異常や加齢、放射線や化学物質の影響、ウイルス感染などが関係していると考えられ、多くの場合はいくつかの要因が重なって発症するとされています。現時点では明確な予防法は確立されていませんが、日ごろから規則正しい生活を心がけ、定期的に健康診断を受けることが大切です。

 

血液内科 診療科長/教授
鈴木(すずき) (りつ)(ろう)

愛知県出身。1989年名古屋大学医学部卒業。
愛知県がんセンター、名古屋大学医学部などを経て2014年より当院腫瘍センター腫瘍・血液内科准教授、2015年より臨床研究センター准教授兼務、2020年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。 専門は血液内科、腫瘍内科、造血細胞移植、生物統計学。


しろうさぎ81号より(2025年8月発行)

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